
この記事の要点
- 01EhP5以下の保守は、2025年末ですでに終わっている。延長保守(2028〜2030年)の対象はEhP6〜8だけで、保守料率は2ポイント上がる。
- 02延長保守と第三者保守で買えるのは時間だけ。2031年以降のtransition optionも、2030年末までにprivate editionへ移ることが条件になる。
- 03移行を止めるのは技術より「誰が決めるか」。勘定体系や決算プロセスなど5つの論点を経理が決めてから、ベンダーを選ぶ。
目次9項目
「2027年までに移行するか、2030年まで延ばすか」。SAP ERPを使い続けている会社で、いま社内に上がっている論点はたいていこの二択です。そして、この二択のまま話が進んでいる会社ほど、あとで高くつきます。
理由は単純で、これはシステムの入れ替え期日だけの問題ではないからです。SAP 2027年問題には、会社の会計をどう作り直すかという設計判断が含まれています。そこは情報システム部門だけでは決められず、経理と、その責任を負うCFOが決めなければ進まない部分が大きいのです。
ここでは、判断の前に押さえておくべき事実と、経理が自分の言葉で決めなければならない論点を整理します。
SAP 2027年問題の事実を確認する。延長保守で買えるのは3年の時間だけ
2020年2月4日、SAPはSAP S/4HANAへのイノベーションコミットメントを2040年末まで延長すると発表しました。あわせて、SAP Business Suite 7のコアアプリケーションについて、メインストリーム保守を2027年末まで提供し、その後2030年末まで任意の延長保守を用意すると公表しています。
見落とされがちな点が3つあります。
ひとつめは、対象範囲です。 SAPの公式説明では、2027年末までのメインストリーム保守と、その後の延長保守の対象は「最新3つのEnhancement Package」(原文は "the latest three enhancement packages")に限られます。SAP ERP 6.0でいえばEhP6・7・8です。EhP5以下の環境は、すでに2025年末でメインストリーム保守が終わり、2026年1月からカスタマー固有保守に入っています。延長保守も買えません。EhP5以下の会社にとって、期限はもう過ぎているのです。EhP6以上へ上げれば2027年末までの保守の対象に入りますが、それ自体が一つの更新プロジェクトになります。経営会議で「延長という手もある」と言う前に、確認すべきことはひとつです。自社のEhPレベルはいくつか。それだけです。
EhP5以下は、延長保守の対象外。期限はもう過ぎている
2025年末でメインストリーム保守が終わり、2026年1月からカスタマー固有保守に入っています。延長保守も買えません。延長か移行かを議論する前に、まず自社のEhPレベルを確かめてください。
ふたつめは、値段の読み方です。 延長保守は2028年初めから2030年末までの3年間。公式の表現は "a premium of two percent points on the maintenance basis"、つまり保守の基準額に対する2パーセントポイントのプレミアムです。保守料の2%ではありません。 保守料率に2ポイントを足す、という意味です。たとえば保守料率が22%の契約なら24%になる(料率は契約によって異なります)。年間の保守請求額で見れば、およそ1割増(+9%程度)です。ここを「2%の値上げ」と読むと、上乗せ額を4〜5分の1に見積もることになります。
「保守料の2%」と読むと、上乗せ額を4〜5分の1に見誤る
公式の表現は、保守の基準額に対する「2パーセントポイント」のプレミアムです。保守料率が22%の契約なら24%になり、年間の保守請求額ではおよそ1割増えます(料率は契約によって異なります)。
みっつめは、延長保守を選ばなかった場合です。 「保守切れ」と呼ばれる状態ですが、放り出されるわけではありません。公式には、延長保守を選ばなかった会社、および延長保守が終わった会社は、カスタマー固有保守(customer specific maintenance)に移ります。ただしこれは既に判明している不具合への対応が中心で、法改正への対応は含まれません。 消費税率や電子帳簿保存法のような制度変更が来たときに自力で作り込むことになります。日本の会社にとっては、法改正への対応が止まる時点こそが、実質的な期限です。
そのうえで、値札の話に戻ります。2ポイントという上乗せは、単年で見れば小さい。ただし、そこで買っているのは時間であって、機能ではありません。 延長保守の期間中、S/4HANA側で進む改善は自社には入ってきません。止まったまま、3年ぶん歳を取るだけです。猶予の本当のコストは、保守料の増分ではなく、その3年で何もしなかった場合の機会損失のほうです。
延長保守で買えるのは時間だけ。その時間で何をするかを決めていない延長は、ただの先送りになる。
2031年以降の選択肢も、すでに公表されている
二択で考えている会社が多いのですが、地図はもう一段先まで描かれています。
SAPは2025年に「SAP ERP, private edition, transition option」を公表しました。2028年から購入可能で、利用期間は2031年から2033年まで。SAP ECCを中心としたクラウドサブスクリプションで、セキュリティ・法規制・ソフトウェア問題へのパッチが提供されます。
ただし条件が重い。関連するシステムは2030年末までにSAP ERP, private editionへ移行している必要があり、サポート対象のデータベースはSAP HANAのみです。旧バージョンのJavaのようなサードパーティ技術も対象外になります。SAPが想定しているのは、最も大規模で複雑なランドスケープを抱える企業です。中身も、SAPのクラウドERPへの移行を支援する専用サービスとセットになっています。
そして公式が念を押しているのがここです。「このオファリングはSAP ERPの保守延長サービスではございません。誤解なきようお願いいたします」。オンプレミスのまま2030年以降も使い続ける会社にとって、この選択肢は存在しません。 猶予がさらに3年延びた、と読むのは誤読です。
transition optionに乗れる会社は限られる
- 関連するシステムを、2030年末までにSAP ERP, private editionへ移しておく
- データベースはSAP HANAだけが対象
- 使えるのは2031年から2033年までの3年間
オンプレミスのまま使い続ける会社は、この条件を満たせません。
2031年からは、延長保守を買った会社も法改正対応のない保守に入る
← 図は横にスクロールできます →
2031年以降もSAPから法改正対応を受けたいなら、S/4HANAへ移るか、2030年末までにprivate editionへ移ってtransition optionを使うことになる。
整理すると、道は二択ではありません。EhPのレベル、2030年末までに何をどこまでクラウドへ動かせるか、自社の規模。この3つで、乗れる道が決まります。
道は4つある。比べる物差しは、会計をどこまで作り直すか
SAP ERP 6.0(ECC 6.0)を使っている会社が取れる道は、大きく4つです。S/4HANAへ移行する、SAPの延長保守で時間を買う、第三者保守に切り替える、SAP以外のERPへ乗り換える。比較記事の多くは費用と期間で並べますが、経理から見るともう一つの物差しがあります。その道を選ぶと、会計の設計をどこまでやり直すことになるかです。
「会計をどこまで作り直すか」で並べると、4つの道の違いが見える
どの道を選んでも、会計の論点はいずれ決めることになる。違うのは、今決めるか、延ばした先で決めるかだけ。
S/4HANAへの移行には、さらに3つの方式があります。いまのシステムをそのまま変換するブラウンフィールド(システムコンバージョン)、新しく作り直すグリーンフィールド(新規導入)、必要なデータと組織だけを選んで移す選択データ移行です。ブラウンフィールドは現行の設定と履歴をそのまま持ち越せるため、短く済むように見えます。その代わり、勘定体系や管理会計の作りも持ち越すので、後で触れる5つの論点を先送りしやすい方式です。グリーンフィールドは会計を設計し直せる反面、過去データをどこまで新環境へ移すかが別の論点として立ちます。選択データ移行はその中間で、会社単位や年度単位で線を引ける柔軟さがある一方、専用のツールと経験のある支援者が前提になります。
第三者保守は、SAP以外の保守専門会社に保守を引き受けてもらう選択肢です。保守料を下げつつ現行システムを使い続けられますが、SAPの公式保守からは離れます。法改正への対応がどこまで提供されるか、将来SAPに戻るときの条件はどうなるか。この2点は契約前に書面で確認しておくべきです。運用保守の費用の中身と見直し方は、SAPの運用保守の記事で扱っています。そして、会計の設計は何も変わりません。延長保守と同じく、買っているのは時間です。
SAP以外のERPへ乗り換える道は、会計の設計を全部やり直す道でもあります。ここで効いてくるのは、機能の比較表より移行の総量です。勘定体系、マスタ、周辺システムとの連携、過去データ。どれを捨てるかを決めることが、乗り換えの最初の仕事になります。
| 選択肢 | 何を持ち越し、何を変えるか | 着手の前に確かめること |
|---|---|---|
| S/4HANA(ブラウンフィールド) | 現行の設定と履歴をそのまま変換する。勘定体系や管理会計の作りも持ち越す | 5つの論点を先送りしていないか |
| S/4HANA(グリーンフィールド) | 新しく作り直す。会計を設計し直せる | 過去データをどこまで新環境へ移すか |
| S/4HANA(選択データ移行) | 必要なデータと組織だけを移す。会社単位・年度単位で線を引ける | 専用のツールと、経験のある支援者がいるか |
| 延長保守(SAP) | 今のシステムのまま、2028〜2030年末の3年を買う | EhPが6〜8か。3年で何を終わらせるか |
| 第三者保守 | 今のシステムのまま、保守料を下げる | 法改正対応の範囲と、SAPに戻るときの条件(書面で) |
| SAP以外のERP | 会計の設計を全部やり直す | 勘定体系・マスタ・連携・過去データのどれを捨てるか |
表 S/4HANAは移行方式ごとに分け、6つの選択肢を並べた。図1が「会計の作り直しの深さ」で比べたのに対し、こちらは着手前の確認事項をまとめている。
4つを並べると、会計の設計に手を入れる順番が違うだけで、どの道でもいずれ決めることは同じだと分かります。違うのは、それを今決めるか、延ばした先で決めるかです。
移行が止まるのは、技術の壁より「誰が決めるか」が曖昧な論点
S/4HANAへの移行プロジェクトが遅れるとき、筆者が支援の現場で見てきた限りでは、止まるのは技術の壁に当たったときより、「これは誰が決めるのか」がはっきりしない論点に当たったときのほうが多い。
分かりやすいのは取引先マスタです。得意先と仕入先のマスタは、S/4HANAではビジネスパートナーに一本化されます。既存のシステムを変換して移る場合は、移行の前にCVI(Customer/Vendor Integration)でデータをそろえておく必要があります。重複している取引先をどう寄せるか、どの部門のコードを正とするか。これは経理と購買・販売が一緒に決めなければ進みません。会計の中にも、同じ種類の論点がいくつもあります。
会計データの持ち方そのものも、S/4HANAで変わりました。従来のSAP ERPでは財務会計(FI)の明細はBSEG、管理会計(CO)の明細はCOEP、固定資産はANEPと、領域ごとに別のテーブルに分かれていました。S/4HANAでは、明細の中心がACDOCAという単一のテーブル(ユニバーサルジャーナル)に移りました。BSEGのような従来のテーブルも残っていますが、財務会計と管理会計の明細は一つの行として持つのが基本になります。
この統合は、内部構造の話に見えて、実際には経理の設計判断を要求する変更です。代表的なのが、勘定科目と原価要素の関係です。ECC 6.0までは一次原価要素をKA01、二次原価要素をKA06で登録していましたが、S/4HANAではこれが勘定コードマスタと共通のFS00に統合されました。勘定コードマスタ側で、その勘定が「一次原価または収益」なのか「二次原価」なのかというG/L勘定タイプを指定する形になります。
固定資産も変わりました。S/4HANAの新しい固定資産会計では、会計基準ごとに並行して持つ償却領域についても、取得価額が総勘定元帳へ即時に転記されます。ECCで並行領域のために必要だった定期転記は要らなくなりました。減価償却は従来どおり、償却計算を実行して転記します。どの会計基準を、どの償却領域で持つかが、そのまま元帳の作りに表れるということです。
これらは全部、IT部門が正解を持っている種類の問いではありません。自社の管理会計をどの粒度で見たいのか。どの会計基準を並行で持つのか。それを決めるのは経理です。
IT部門に答えがない問いは、経理が引き取る
管理会計をどの粒度で見るか。どの会計基準を並行で持つか。重複した取引先のどのコードを正とするか。取引先マスタは購買・販売と一緒に、残りは経理が決めます。
経理・CFOが決めるべき5つの論点
抽象論にしないために、実際に決裁が要る論点を並べます。移行プロジェクトが始まってから聞かれると、たいてい時間がなくて「今のまま」で押し切ることになる項目です。
1. 勘定科目と原価要素の一本化をどう設計するか。 FS00に統合された以上、勘定体系の設計と管理会計の費目設計は、もう別々には走らせられません。どちらの都合を優先するかを先に決める必要があります。
2. 明細をどの粒度で持つか。 ACDOCAは持とうと思えば細かく持てます。だからこそ、何を分析軸として持ち、何を持たないかを決めないと、テーブルだけが太って誰も見ない列が残ります。
3. 固定資産で、どの会計基準を並行して持つか。 償却領域の設計は後から足すのが重い領域です。単体・連結・税務のどれを、どの償却領域で持つのかを移行前に確定させます。
4. 通貨と換算レートの扱い。 通貨コード、換算レートタイプ、換算比率。海外子会社を持つ会社ほど、ここの設計が決算作業の重さを決めます。
5. 決算プロセスを、写すのか作り直すのか。 これがいちばん重い判断です。
「今のやり方をそのまま写す」が、いちばん高くつく
移行にあたって最も選ばれやすく、最も後悔されやすいのが、現行の業務をそのままSAPの新環境に写す方針です。判断としては一見安全で、プロジェクトも短くなるように見えます。
ところが実際には逆になることが多い。今の決算プロセスには、システムの制約を人手で埋めてきた手当てが必ず含まれています。月末に特定の科目だけ手で振り替えている、システム外の表で数字を作ってから入力している、といった類の作業です。それらを「業務要件」として写そうとすると、標準機能では素直に実現できないため、作り込みが増えます。作り込みは移行費用を押し上げ、その後のバージョンアップのたびに検証対象として残り続けます。
写した手作業は、作り込みになって残り続ける
月末の手振替や、システム外の表で作っている数字。これを「業務要件」として写すと作り込みが増え、移行費用を押し上げます。作り込みはバージョンアップのたびに検証対象として残ります。
現行を写す方針は、過去の制約を将来のコストに変換する判断です。 移行はその手当てを外せる、めったにない機会でもあります。決算プロセスをどう組み直すかという論点については決算早期化の実装支援に、そこへ至る工程の順番は経理DXの進め方と事例に整理しています。
決める順番
順番を間違えると、判断材料が揃わないまま期日だけが迫ります。おすすめの順序はこうです。
第一に、自社のEhPレベルを確認する。ここで乗れる道の数が決まります。EhP5以下なら、保守の期限はすでに過ぎています。第二に、2030年末までにどこまで動かすつもりなのかを決める。2031年以降の選択肢に乗れるかどうかも、法改正対応が来ないカスタマー固有保守で耐えるのかも、ここで分かれます。第三に、延長保守を使うなら、その3年で何を終わらせるのかを先に書く。書けないなら、それは延長ではなく先送りです。第四に、経理側で上の5論点の方針を決める。ベンダー選定はそのあとです。要件が固まっていない状態で見積もりを取っても、比較できるものが出てきません。
決める順番は4段。経理の5つの論点は、ベンダーを選ぶ前に決める
2027年末という期日は動きません。動かせるのは、その前に何を決めておくかだけです。
経理が押さえておくこと
- EhP5以下は、2025年末で保守が終わっている。EhP6〜8も、メインストリーム保守は2027年末まで
- 延長保守と第三者保守で買えるのは時間。会計の設計は何も変わらない
- 2031〜2033年のtransition optionは、2030年末までにprivate editionへ移ることが条件。保守の延長ではない
- 勘定体系・明細の粒度・償却領域・通貨換算・決算プロセスの5点を経理が決めてから、ベンダーを選ぶ
Never Redは、SAP FI(財務会計)の導入・更改と、経営管理の設計を同じ人間が担うことにこだわっています。会計の設計判断とシステムの設定を切り離さないためです。移行の進め方や論点整理の段階からのご相談も承っています。移行で当社が担う作業はS/4HANA移行支援に、支援の全体はSAP導入支援にまとめています。事業の全体は事業紹介をご覧ください。
SAPのサポート期限(保守期限)の一覧。製品とリリースごとに決まる
サポート期限(保守期限とも呼ばれます)は、製品とリリースごとに決まっています。SAPが公開している情報をもとに、期限の決まり方を一覧にします。
| 製品・リリース | メインストリーム保守の期限 | 補足 |
|---|---|---|
| SAP ERP 6.0(ECC 6.0)のEhP5以下(EhPなしを含む) | 2025年12月31日(終了) | 2026年1月からカスタマー固有保守。延長保守は選べない |
| SAP ERP 6.0(ECC 6.0)のEhP6〜8 | 2027年12月31日 | 2028年から2030年末まで、任意の延長保守がある。その後はカスタマー固有保守 |
| SAP S/4HANAの2023年版以降 | リリースごとに7年 | 新しいリリースは2年ごと。SAPは2040年末まで、少なくとも1つのリリースを保守の対象に置く |
| SAP S/4HANAの2022年版以前 | リリースごとに5年 | リリースごとの日付は、SAPの製品別の情報に載っている |
表 製品とリリースごとのサポート期限(出典1・7・9・10をもとに作成)。メインストリーム保守は、法改正への対応と修正プログラムがそろう保守の段階を指す。
SAP ERP 6.0(ECC 6.0)のサポート期限は、EhPで分かれる
SAP ERP 6.0は、ECC 6.0やECC6.0とも書かれます。この製品のサポート期限は1つではありません。Enhancement Package(EhP)のレベルによって、2025年末と2027年末に分かれます。ECCの保守期限を聞かれたら、先に自社のEhPを確かめてください。
S/4HANAのサポート期限は、リリースごとに決まる
S/4HANAにも、保守の期限があります。SAPは2022年9月、2023年版から新しいリリースを2年ごとに出し、各リリースのメインストリーム保守を7年にすると発表しました。それより前のリリースは5年です。
2040年末までという約束は、少なくとも1つのリリースを保守の対象に置く、というものです。いま導入したリリースが2040年まで保守される、という意味ではありません。リリースごとの日付は、SAPのサポートポータルにある製品別の情報(Product Availability Matrix)に載っています。
R/3(R3)のサポート終了後は、カスタマー固有保守が続く
SAPのサポート文書(SAP Note 52505)は、すでにカスタマー固有保守に入っているリリースの例として、SAP R/3 4.6Bを挙げています。
サポート終了と呼ばれていても、保守がすべて止まるわけではありません。同じ文書によれば、カスタマー固有保守に終わりの日付はなく、保守契約に従って保守料を払い続けます。ただし、法改正への対応とサポートパッケージは届きません。
よくある質問
- SAP 2027年問題とは何ですか。
- SAP ERP 6.0(ECC 6.0)を含むSAP Business Suite 7のメインストリーム保守が2027年末で終わることに伴い、利用企業がS/4HANAへの移行か、別の道かを判断しなければならない問題です。2027年末まで保守が続くのは最新3つのEnhancement Package(EhP6・7・8)だけで、EhP5以下は2025年末ですでに終わっています。まず自社のEhPレベルを確かめるところから始まります。「SAP2027」「SAPの2027年問題」と書かれることもあります。
- 2027年を過ぎると、SAPは動かなくなりますか。
- 動かなくなるわけではありません。延長保守を選ばなければカスタマー固有保守に移り、既知の不具合への対応は続きます。ただし法改正への対応は含まれないので、税制や帳簿保存のルールが変わったときは自社で手当てすることになります。
- 延長保守の費用はどれくらい上がりますか。
- 公式の表現は「maintenance basisに対する2パーセントポイントのプレミアム」です。保守料率が22%の契約なら24%になり、年間の保守請求額ではおよそ1割増です。「保守料の2%」と読むと、見積もりを大きく外します。
- 移行の検討は、IT部門と経理のどちらが主導すべきですか。
- システムの方式と日程はIT部門、会計の設計は経理とCFOが決めます。勘定体系、明細の粒度、償却領域、通貨換算、決算プロセスの5点は、IT部門だけでは決められません。経理がこれを決めてからベンダーを選ぶほうが、見積もりを比べやすくなります。
- SAPのサポート終了は、なぜ起きるのですか。
- SAPが、製品のリリースごとに保守の期間を決めているからです。SAPのサポート文書(SAP Note 52505)によれば、SAPはある時点から、法改正や新しい技術に合わせてそのリリースを直すことをやめます。そこからがカスタマー固有保守です。SAP ERP 6.0のEhP6〜8では、メインストリーム保守の期限が2027年末、任意の延長保守の期限が2030年末です。
- 2027年以降はどうなりますか。
- SAP ERP 6.0のEhP6〜8で延長保守を選んだ会社だけが、2030年末までメインストリーム保守に近い内容の保守を受けられます。選ばなかった会社は、2028年からカスタマー固有保守に入ります。
- SAPの2030年問題とは何ですか。
- この記事では、延長保守が終わる2030年末の期限を「SAP 2030年問題」と呼びます。2031年からは、延長保守を選んだ会社もカスタマー固有保守に入ります。2031年以降の選択肢として公表されているtransition optionは、2030年末までにprivate editionへ移ることが条件です。
出典
- メインストリーム保守2027年末/延長保守2030年末/S/4HANA 2040年末までのコミットメント/対象は「最新3つのEnhancement Package」/延長保守は「maintenance basisに対する2パーセントポイントのプレミアム」で2028年初〜2030年末/非選択時はカスタマー固有保守:SAP公式「Innovation Commitment for SAP S/4HANA until 2040 – Clarity and Choice on SAP Business Suite 7」
- SAP ERP, private edition, transition option(2028年から購入可能・利用期間2031〜2033年・2030年末までにprivate editionへ移行が必要・対象DBはSAP HANAのみ・「保守延長サービスではございません」):SAP Japan「RISE with SAP による複雑な DX をナビゲートする新しいオファリング」(2025年3月3日)
- ユニバーサルジャーナル(ACDOCA)によるFI/CO/固定資産の明細テーブル統合(BSEG・COEP・ANEP):【SAP FI】Universal Journal(ACDOCA)をわかりやすく解説(SAPラボ)
- 原価要素とG/L勘定タイプ(一次原価または収益/二次原価):SAP Help Portal「原価要素」(SAP S/4HANA オンプレミス版・日本語・公式)。画面項目レベルの手順とFS00への統合(ECC 6.0まではKA01・KA06)は【SAP】原価要素の設定方法について徹底解説!(SAPコンサルブログ)が詳しい。
- 新しい固定資産会計での並行償却領域の取得転記と定期転記の扱い:SAP Help Portal「Migrating from Classic to New Asset Accounting」(SAP S/4HANA オンプレミス版・公式)
- カスタマー固有保守に法改正への対応が含まれない点:SAP Note 52505(出典10)。解説としてNatuvion「SAP ERP 6 end of maintenance」
- EhP0〜5のメインストリーム保守が2025年末で終了し、2026年1月からカスタマー固有保守に入ること、延長保守の対象がEhP6〜8であること:SAPジャパン サポートニュース 2024年7月(JSUG掲載)
- 得意先・仕入先とビジネスパートナーの統合(CVI):SAP Learning「Working with Business Partners in SAP S/4HANA」(SAP公式)
- S/4HANAは2023年版から2年ごとのリリース、各リリースのメインストリーム保守は7年(それまでは5年)、2040年まで少なくとも1つのリリースを保守の対象に置く方針:SAP News「New SAP S/4HANA Release and Maintenance Strategy to Deliver Greater Innovation and Flexibility」(2022年9月15日)
- カスタマー固有保守が始まる時点の説明(リリースが法改正や新しい技術などの外からの要求に合わせて調整されなくなる)、カスタマー固有保守に終了日がないこと、保守料の支払いが続くこと、法改正とサポートパッケージが提供されないこと、延長保守の内容はメインストリーム保守に近いこと、カスタマー固有保守に入ったリリースの例(SAP R/3 4.6B)、期限の公開先(Product Availability Matrix):SAP Note 52505「Support after end of mainstream maintenance or extended maintenance」(Version 66、2024年8月19日。SAPが公開しているPDF)
CONSULTATION
SAP導入・S/4HANA移行のご相談
延長保守か移行か、移行ならどの方式か。会計の設計まで含めて、方針を決める段階からご一緒します。SAP FI(財務会計)の導入と経営管理の設計を、同じ担当者が受け持ちます。
あわせて読みたい




